永遠に新しい近世の美 「琳派」、「四十八茶、百鼠」

絢爛にして大胆、かつ緻密な美の世界『琳派』。日本の美術史の中でもひときわ輝くこの装飾芸術に、なぜか今、気持ちが惹きつけられます。

 『琳派』を生んだ背景は、政治的中心を江戸に奪われた京の都のプライド。文化ばかりは譲れないと宮廷と京の上層町衆が手を組んで、平安の王朝文化復興を目指したところにあります。

平安時代の大和絵の技法や題材を取り入れて、
上質な和趣味を絵画や工芸品に展開します。その表現は、江戸の格式張った世界とは対極的で、実に華やかで、京の風雅にあふれた世界でした。その豊かな装飾性に『琳派』は、当時最新流行の、しゃれたインテリアやモードでした。
筆致の繊細で巧みな技法と王朝貴族に愛される模様まで昇華された『琳派』が、現代の成熟社会のなかで静かなブームとなっています。

いま再び『琳派』を新しい視点から取りあげました。国宝や重要文化財に指定されている名品をモチーフに、江戸後期に、粋な色、お洒落な色として「四十八茶、百鼠」という言葉が生まれるほどに流行した茶、鼠の色を基本に配色デザインを行い、今までにない新しいお洒落な「琳派のきもの」を創作しました。

成熟した女性が、「琳派のきもの」と向き合いながら暮らすという至福を味わっていただき、末永く愛していただける着物となることを願っています。
茶色や鼠色は、江戸中期まであまり色彩の歴史の表に表れてこなかった色です。それが江戸後期に入って、歌舞伎役者の衣裳の影響によって目立って出現し、純粋に当時の人々が好む流行色になりました。そして茶色や鼠色にさまざまな調子の違った色が生み出されて、俗に「四十八茶・百ねずみ」という言葉が生まれました。茶色には、四十八種類の色があり、鼠色には百種類の色があるという意味です。

王朝貴族と異なる町衆から流行した茶色、鼠色といった新しい色調の美が、やがて「粋」という言葉で表現され現在に至っています。派手でなく、落ち着いた色調のしっとりとしたもので、地味に近いが色気のある色でもあり、微妙なニュアンスが含まれています。江戸だけでなく、京の町の屋内外、男女の普段着、晴れ着の主たる色調も茶、鼠いろで彩られていました。

現代的な日本人の色彩感覚は、世の中の落ち着きとともに、「四十八茶・百ねずみ」の色を好み、微妙な色彩の味わい、匂いといったようなものが重んじられて来ているのです。